端午の節句とは
2017年5月11日
日本には、節目を大切にする文化があります。そこには、人を想う気持ち、より良く在りたいと願う気持ちが込められています。
半纏(法被)、浴衣、手拭、鯉口シャツ、股引などの祭衣装、和服のオーダーメイド、伝統芸能の衣装オリジナル製作、修理を通じ、日本の祭りを支える染物屋でありたい…
京屋染物店の蜂谷悠介です。
東北のゴールデンウィークは快晴がつづき、岩手県平泉町の春の藤原まつりも多くの人で賑わいました。
5月の節句といえば、端午の節句。5月5日「こどもの日」ですね。
日本の昔からの慣しである端午の節句は、どんな想いが込められたものなのでしょうか。
今日は、そのあたりのことを私の独自解釈や思い出話も含めてご紹介します。
節目を祝う
端午の節句とは、日本の季節の節目を祝う伝統的な行事です。
我が家で5月5日「こどもの日」に必ず行うことを5つご紹介します。
1.床の間に若大将を飾る
我が家では、私が誕生した時に祖父から頂いた五月人形を飾ります。祖母から聞いた話ですが、いつも飾っているこの若大将は凄いらしいのです。
私が赤ん坊の頃の端午の節句の時もこの若大将を飾っていたそうです。そのとき大きな地震がきて、飾っていた台の上からガラスケースごと落下。しかし、ガラスも割れず、ガラスケースの中の若大将も倒れたり鎧兜が崩れすることなく、何事も無かったかのようにイスに腰掛けたまま。
この若大将の様子を見た祖父と祖母は、「これは縁起がいい。どんな災難も涼しい顔で受け流す。災いを払う若大将だ。どんな苦難も乗り越えられそうだ。」など大喜び。
その時のエピソードは語り継がれ、私も、我が子と若大将を飾りながら、このエピソードを話しています。
2.庭に鍾馗のぼり旗をたてる
鍾馗さんが描かれたこの幟旗は、私が誕生した時に父が染めた旗です。
鍾馗は中国から伝わった邪鬼を払い、疫病を防ぐ神様です。日本には室町時代から伝わり、子供の無病息災を願う端午の節句を通して日本文化に馴染んで行きました。
毎年、この旗の前で家族写真を撮ります。父はすでに他界しているのですが、この旗に描かれている鍾馗が父に似ていて、旗を広げるたびに父に見守られている様な気持ちになります。現在は私の息子達もこの旗の下で元気に遊んでいます。
3.柏餅を食べる
京屋染物店がある岩手県一関市は「もちのせき」と言われるほど、餅文化が浸透していて、冠婚葬祭など人生の節目には必ず「餅」が登場します。
一関には「祝い餅つき振舞隊」という餅つき活動を展開する団体もあり、民謡を歌いながら餅つきをしてくれます。毎年、「全国ご当地もちサミット」も開催されているんですよ。
京屋染物店の近所には「松栄堂」という和菓子の老舗や、「大福屋」という甘味処もあり、団子、大福、餅、和菓子などは身近な存在。
5月5日に食べる柏餅も、「どうして柏餅を食べるの?」などという疑問も抱かず、今日まで過ごしていました。
気になって、柏餅について調べると、すごく素敵な願いが込められていることが分かりましたので、ご紹介します。
柏の葉は枯れても尚、春の新芽が芽吹くまで落ちずに残る。こうした姿から「葉守の神が宿る木」とされてます。
新芽が出ないと古い葉が落ちないという特徴を「子供が産まれるまで親は死なない」=「家系が途絶えない」という縁起に結びつけ、「柏の葉」=「子孫繁栄」との意味を持つそうです。
神社や神棚で神様を参拝する際に、手を叩く行為を「柏手を打つ」と言います。
柏手は神様の前で打つ神聖な行為です。そのことが、男の子の健やかな成長や武運を祈願する端午の節句にふさわしいと考えられたのかもしれません。
4.菖蒲とヨモギのお風呂に入る
「こどもの日には菖蒲湯に入る」というご家庭は多いと思うのですが、我が家は、菖蒲とヨモギの2種類を湯船に浮かべます。
菖蒲湯に入る謂れは諸説ありますが、私が祖父や父から聞いている謂れをご紹介します。
昔々、子供が山で鬼に出くわしました。子供は走って逃げますが、鬼も子供を食べようと追い掛けてきます。子供は里まで逃げますが鬼に捕まりそうになり、転んでしまいます。
転んだ先がヨモギが群生している場所で、子供はヨモギの葉に埋もれます。鬼は「ヨモギの葉」を「炎」と見間違え、驚き慌てます。鬼が追い掛けるのを諦めたと思い、子供は立ち上がり走り出します。子供が炎(ヨモギ)の中から出てきた様子を遠くから見ていた鬼が、さらに子供を追い掛けます。鬼に追い掛けられていることに気付いた子供は、菖蒲の薮に身を隠します。子供を捕まえようと鬼が薮に近づきます。「菖蒲の葉」を「刀」と間違えた鬼は悲鳴をあげて山へと逃げていきました。
子供は、ヨモギの葉(炎)と菖蒲の葉(刀)に守られ、鬼に捕まらずにすみました。
「子供たちが、鬼に捕まってしまわないように、願いを込めて菖蒲とヨモギのお風呂に入るんだよ」
子供の頃、こんな話を聞かされながら、祖父や父と一緒にお風呂に入っていたことを思い出します。
5.家族みんなで子供の健やかな成長を祝う
端午の節句(こどもの日)の夕食は、家族みんなで子供の成長を喜び、これからも健やかに成長してもらいたいと願い、節目を祝います。
親戚の子供たちも集まり、初節句をお祝いするなど、家族や親族の絆を確かめ合う良い機会にもなります。
日本にある思いやりの詰まった文化、四季を感じ節目を祝う風習をこれからも大切にし、未来に繋げていきたいです。