半纏(はんてん)のデザインが出来上がるまで
2017年8月3日
京屋染物店では、半纏(はんてん)、法被、浴衣、手ぬぐいなどの作成を
デザインから染め、縫製まで一貫して自社で行っています。
今回はその1つ「デザイン」がどのように出来上がっていくのかについて
京屋染物店のスパイの櫻井がお伝えしていきたいと思います。
デザインが出来上がるまで
お客様から半纏(はんてん)の注文を受け、
その半纏(はんてん)のデザインがどのように出来上がっていくのか
京屋染物店のデザイナーの蜂谷淳平さんにお聞きしました。
お客様から半纏(はんてん)の注文を受けた淳平さん。
まずは、お客様と大よその半纏のデザインイメージを共有するため
京屋染物店のHPの製作事例などの中から
お客様に希望のイメージのデザインを選んで頂きました。
そのイメージをお客様の希望に合わせ、
第1案として大紋の部分(背中の大柄な模様)を江戸文字にし、
腰柄を変えた2通りの半纏のデザインを提案します。
大紋のデザイン、迫力のある文字にするために
今度は「大紋の部分をもう少し激しくしてほしい」との
ご要望を頂き、デザインの修正をしていきます。
文字に激しさを出すために
ひげ文字の本を手に取り
デザインの基となるフォントを探します。
ひげ文字の本。こんな本があることにビックリです( ゚Д゚)
このひげ文字の本を参考に
オリジナルの手書きのラフ案を作成。
手書きで作ることに驚きましたが、
「今の時代でもラフ案は手書きだよ」と淳平さん。
これをデザインソフトでトレースして
一筆一筆の筆の動きに違和感がないように
確認していきます。
文字の虫食いが大門の躍動感を出す
文字に躍動感を出すには、筆で書いたように
「擦れ(かすれ)」が出てくるもの。
「虫食い」と呼ばれる穴を文字に入れ込んでいきます。
「虫食いがないと迫力が出ないし、
虫食いが多すぎると文字の形が整わない。
ちょうどいいラインを見つけるのが難しい。」と
淳平さんの試行錯誤の様子が見えてきます。
虫食いがあると文字に迫力が出てきます。
おおよそ丸1日かかり
半纏(はんてん)の大門のデザインが決まりました。
お客様の想いを上回るデザインのご提案をしたい
再度お客様にデザインを提案してところ
両衿(えり)を「花四会太鼓組」にしてほしいとのお話を受けました。
今度は、衿(えり)のデザイン修正に入ります。
単純に「花四会太鼓組」を両衿に入れるだけですと
下記のデザインになりますが
両衿に文字を入れる型も複数あるので
もう2つのパターンを一緒に提案し、
お客様にご希望のデザインを選んで頂きました。
なぜお客様のご要望以上のバリエーションで提案するのか?
そこには
「お客様の想いを上回るデザインのご提案をしたい」
という京屋染物店の想いがあります。
イメージと違うデザインを
お客様から「腰柄も入れてみたものも見てみたい」とのご相談を受け、
花四会太鼓組の半纏(はんてん)ということで
太鼓のバチを組み合わせた腰柄をご提案。
「少し派手な印象を受ける」というお客様からの感想を頂き、腰柄を再度修正。
花四会の「四」に合わせた4本線のラインのデザインに変更しました。
遂にお客様が納得いく半纏(はんてん)のデザインのご提案ができました。
おそらく最初にお客様がイメージしたものと
ある意味で全く違うデザインが出来上がったような気がします。
今回出来上がった半纏のデザインは
お客様の半纏への想いと
京屋染物店のデザインにかける想いが詰まったまま、
次は「染め」の工程に移っていきます。
文:櫻井 陽
一関地域を盛り上げる活動をしています。
京屋染物店に潜入取材し、『京屋染物店のありのまま』を皆さんにお伝えしていきます。