電話番号は「161番」京屋染物店の「色」のお話
2017年8月3日
京屋染物店の電話番号は0191-23-5161です。
この番号は大正8年創業時の電話番号「161番(いろいちばん)」から来ています。
京屋染物店は染屋としての「色」へのこだわりを今もなお引き継いでいます。
今回は、半纏(はんてん)、法被(はっぴ)、浴衣などの生地を染める
「色」についてご紹介します。
色は無限にある
一口に「染める」と言っても、その方法も材料も様々です。
顔料染め、反応染め、草木染めなど様々な方法、
液体の染料(染めの材料)、粉状の染料な材料も色々です。
これらの染料を使って生地を染めるのですが、
同じ染料を使っても生地によっては色が異なって見えます。
また、その日の温度や湿度によっても染まり方は異なります。
まさに「色」は無限にあるのです。
色見本は京屋の「宝」
無限にある色の中からお客様が望む色を提案するために
京屋染物店には「京屋カラー」という色見本を提案させて頂いております。
「京屋カラー」は大正時代から続く染めの経験を集積し、厳選した約100色の色見本です。
半纏の生地と手拭いの生地によって、色の出方が異なるため
どの色にも2つの生地の色見本を作っています。
染め職人は、その見本を元に染料の調合を行っています。
この色見本がなければ、同じ「色」が作れないため
酒蔵で言う麹と同じように、京屋にとってはこの色見本が「宝」です。
また、実際の「色」とパソコンやスマホで見る「色」とは
大きく異なる場合があるため、遠方のお客様とのやり土地では
名刺サイズの色見本を送付させて頂き、実際に目で見て確認して頂いております。
では、「色」を実際にどのように作っていくのかについて説明していきます。
色を作る
今回はお客様希望の「浅葱色(あさぎいろ)」を作ります。
まずは、製作物に合わせた量の染料を作るため
染料の計算を行います。
半纏(はんてん)、浴衣、手拭いなどの種類によって
染める面積、枚数、生地の種類から
今回作成する染料の量と分量を決めていきます。
この数値はこれまでの染めのデータを記録しており、
それを参考に作られたものです。
それでは、指示書をもとに今回は「反応染料」を作っていきます。
まずはお湯を沸かして水量を測り、尿素を入れていきます。
尿素は染めの化学反応を助ける作用があるそうです。
次に、水道水の金属イオンが染料に影響を与えるのを防ぐための
オルガノテックスと呼ばれるものを入れます。
そして色の原料になる染料3種(ターキス、イエロー、ブラック)を入れ、かき混ぜます。
浅葱色なのに染料は濃紺のように見えますが
実際に布(手拭い)を染めると浅葱色になります。
さらに、途中で反応染料の反応を良くするために
水を入れて温度の調整を行います。
この反応(化学反応)が良く起こらないと
にじみが出たり、色がボヤっとしたりするそうです。
さらに重曹と糊(のり)を入れます。
特に糊(のり)はかなりの量を入れます。染料の40%は糊(のり)になるそうです。
糊(のり)を入れるのは、染料の水っぽさを減らし、生地へのにじみを防ぐためです。
さらにカンブリモゲンという別な糊を入れます。
最後に専用のミキサーで高速でかき混ぜて、完成です!
浅葱色に染める
この染料を使って、染めていくと・・・
立派な浅葱色の手ぬぐいになりました。
乾燥作業を行い続けている工場はサウナのように暑いですが、
浅葱色の手ぬぐいが並ぶと何だか涼しげです。
このようにして、他に1つとないオリジナル手ぬぐいの「色」が出来上がります。
染め職人の工場長から
「どれだけこれまでの経験が蓄積された指示書に従って作ったとしても、
その日の天候・温度・湿度によって仕上がり異なるため、前と同じ「色」は作れない。
無数にある「色」からお客様の求める1つの「色」に近づけることが
難しさでもあり、醍醐味でもある。」
というお話がありました。
161番の職人の想いを感じました。
文:櫻井 陽
一関地域を盛り上げるため日夜活動しております。